第23回定例研究会(実地研修会)
■趣旨
 NPO法人ヘルスケア・リレーションズでは、このたび、定例研究会にて会員の皆様と病院見学を通じて患者参加型医療のについて考える実地研修を定例研究会の一貫として企画いたしました。
 今回は千葉県鴨川市にある亀田メディカルセンターK タワーを見学したいと思います。「患者様の多様なニーズにこたえたい」そんな医療者の夢が詰まったような施設“K タワー”が今年4 月、亀田メディカルセンターに誕生しました。
 今回、亀田メディカルセンターK タワーの見学及びディスカッションを通して多様な患者ニーズにこたえる病院の経営戦略について考えていきたいと思います。

(担当理事 安達 暁子)

■見学記
 第23回定例研究会は、亀田メディカルセンターの実施研修会という形で開催した。同院の見学は平成13年秋にも行っており、2回目となる今回は平成18年4月に竣工した亀田総合病院Kタワーなど、この4年間で新たに開設された施設が中心になった。
 まずは、平成16年に開設された亀田研修センターと、安藤忠雄氏が設計した亀田健保健康福祉会館内にある亀田リハビリテーション病院を見学した。
 そしてKタワーの見学に先立ち、そのコンセプトについて説明を受けた。亀田信介院長は「Kタワーでは、21世紀のアメニティのスタンダードをめざす。Kタワーは全室個室だが、そのうち約100床は室料を取っていない。スタンダードは文化レベルによって変わるが、日本の医療は文化レベルに合っていない。例えば個室に入ろうとすると、贅沢だということで『懲罰的』な室料を取られる。これはおかしい。ここではあるべき姿を見せて、それを実現するという道具ということでKタワーを作った。」と語った。
 Kタワーに入ると、右手に相談窓口、左手にはコンシェルジュが目に入る。相談窓口は24時間開いており、どのような内容の相談でも受け付けているということだった。コンシェルジェでは、家族のための宿泊手配にはじまり、院内で売っていないものをスーパーマーケットまで買いにいくこともあるそうだ。
 3階には、周産期センターがある。LDRの分娩台に隣に、ソファーベットが並んでいた。Kタワーの全個室に置かれているというソファーベッドは、肘掛を引き出して2m以上の長さまで伸ばせるようになっている。ここで夫が付き添い、立会って分娩をすることが多いという。LDRのシャワー室は、座ったまま浴びられるように腰掛けもついていた。
 Kタワーでは、ICUも個室である。亀田信介院長は「ICUにこそ、家族のサポートが必要」と、ここにもソファーベットやトイレを設置している。さらに、酸素・吸引などのパイピングも2箇所に設けており、状態に応じて窓外や家族が見えるようにベッドが配置されていた。隣室との間の窓にはロールカーテンが設けてあり、個室ながらも看護師が隣の患者を観察できるように配慮されていた。
 各病室のオーバーベットテーブルに据え付けられたモニターには、11のメニューが並んでいた。このモニターからは、「選択メニュー」の希望を入力したり、院内売店から商品を取り寄せることができる。さらに、電子カルテを参照したり、将来的には患者と医療者がともに注射などのチェックを行うための画面も開発しているという。
 最上階には、海の見える霊安室があった。ここには最期を迎えた患者に湯灌やメイクをするための部屋があり、係員が24時間待機していた。さらに、遺族が今後のことなどを話し合うための別室や、他の患者などの眼に触れずに北側の車寄せに降りられるエレベータも設けられていた。 
 最後にレストランフロアのウッドデッキで亀田信介院長と乾杯し、実地研修会を終えた。
   

 (副理事長 瀬戸僚馬)

 
ICUには、家族が付き添えるよう
ソファーベッド、洗面・トイレが完備。


最上階の霊安室。
窓外には太平洋が広がる。


ウッドデッキにて写真撮影。
左端が、亀田信介院長。

 
   
※ディスカッションの内容は、正会員専用サイトに掲載いたします。