講演要旨
問題提起 患者参加型医療におけるクリティカルパスへの期待
瀬戸 僚馬
杏林大学医学部付属病院看護部情報システム専任看護師

 クリティカルパスは、1990年代後半になって急速にわが国の医療界に広がった。パスによるケアの標準化は、「質の何上と患者の満足度を高め、患者や地域社会の支持を獲得した」ともいわれた。
 しかし、手放しで喜ぶのはいささか短兵急かもしれない。パスが普及され始めて10年近く経とうとしている今夏、ある新聞ではパスを紹介するための特集記事が組まれた。つまり、患者にとってパスは決して身近なツールではないのである。ホームページにパスを掲載している病院も増えているようだ。ただ、同時に「患者のためのパス全集」やその類のサイトのような、パスそのものの普及を図るツールも必要になるだろう。
 一方、患者参加の側面から、パスは新たな展開が求められるようになったのではないか。パスによって満足度が高まったのは、患者にとってケアプロセスが明快になったからであろう。つまり、「情報の非対称性」を少しなりとも改善できたからである。しかし、そのプロセスはレディメイドである。これからは、全日程が決められた添乗員付きツアーから、どれだけ患者の自由度の高い、いわばカスタムメイドなパスを作れるかも課題である。
 「患者参加型クリティカルパス」を合言葉に、真に患者に指示されるパスづくりについて考えていきたい。

患者参加によるクリティカルパス作成とその効果
山田 雅子
福井県立病院内科病棟副看護師長

 急性骨髄性白血病の治療は終了まで1年以上要し、複雑であることから、初めての試みとして6名の患者の参加により、治療経過のわかり易い患者用クリティカルパス作成に取り組んだ。
  患者の意見をもとに、1)治療経過図「うさぎの山登り」、2)点滴を絵で描いた化学療法クリティカルパス、3)治療内容を示した小冊子を作成し、さらに患者が自分の目で骨髄像を確認できるようにした。
  今回は、その経過とその後の取り組みについて紹介する。

患者が求める情報とは〜乳がん患者の立場から〜
高蛛@由香
医療ライター

 入院や手術が必要な病は突然わが身に降りかかります。経験のないこと,先の見えない不安に戸惑う患者にとって,患者用パスはその道しるべの一つです。乳がん治療のように個別性の高い医療におけるパスの限界を前提に,患者用パスは医療者とのよりよいコミュニケーションのきっかけとして存在することが期待されます。一方,患者には,医療の不確実性と個別性を理解したうえでの情報活用能力が求められています。
乳がん患者は自らの闘病をよく「切ってからが始まり」と表現します。乳がんの治療はますます複雑化し,入院に至るまで,そして退院後も患者が自ら選択しなければならない事がたくさんあります。情報があふれる現代においても,なおも患者は真に欲する情報が不足していると感じています。患者本人として,また患者会や院内患者サロンを運営するなかで感じてきた,「本当に患者が求めている情報とは何か」を少しでもお伝えできれば幸いです。